民法719条1項後段で、加害者不明の共同不法行為において損害を被ったことは明らかだが、複数の損害について、それぞれ共同不法行為者のうちの誰による加害結果なのかわからない時に、全員に共同責任を認めると規定しているのに、同条1項前段の、狭義の共同不法行為が成立するためには、共同不法行為者の各人の行為と損害はすべて因果関係で結びついていなければならないとする説が判例・通説であるのはなぜですか?誰による加害結果なのかわからなくても、客観的関連共同があれば共同不法行為責任を追及できるとする719条1項後段についての判例の見解と矛盾するように思えるのです。http://q.hatena.ne.jp/1147986242

「因果関係の緩和」すなわち

各人の行為と直接の加害行為の間に因果関係があり、そこに共同性が認められれば、共同の行為という中間項を通すことによって損害の発生との間に因果関係は満たされたものとする(判)

という意義があるとも言われています。ここが709条との違いです。


一項と二項の因果関係の要否の違いはそれぞれの状況において被害者保護をどの程度厚くするかという法政策的配慮といわれています。
因果関係が明らかならば原則どおりその立証責任を被害者に負担させてもよいだろう、それが不明ならば因果関係の不存在を加害者に負担させるのが妥当であろうということです。
選択的併合で両請求をするだけのことだと思います。


参考までに:

後段の場合の共同不法行為は前段の狭義の共同不法行為とは性格が異なり加害者各人の因果関係の存在に関する被害者側の立証の困難を救うために因果関係が推定されたものと解されている。したがって、共同行為者は自らの行為と損害の間の因果関係の不存在を立証しなければ免責されず逆に立証されれば免責されると解すべきである
(コメンタールp275)



訂正。
「加害者が明らかならば〜それが不明ならば〜」の間違い。

後段は前段と異なり「加害者不明」の場合。